山本晋「ナラクノアドゥ」全6巻

「ナラクノアドゥ」のあらすじ・感想を紹介します。

あらすじ

十二の魔王と闇より生まれた種族に人類が蹂躙されている世界。ある日、奈落より生まれし最強の第十二位の魔王(アドゥ)が、天使と人間になる契約を結んだ。その契約は、残りの魔王を一人倒す毎にアドゥが力を失っていき、人間に近づいていくというものであった。アドゥは、弱くなっていく自分を補うため、人間に擬態して力ある人間の考えを誘導し、冷徹で合理的な戦術も駆使して、順次魔王を倒していく。一方で、人間に近づくにつれて、魔王としての合理的な考えから、血や心の通った人間らしさを少しづつ獲得していくのだった。最強の魔王が最弱の人間を目指して身も心も変化していく本格的なファンタジーです。

感想

この作品、まず魔王たちのスケールに圧倒されます。人間よりも絶望的なまでに巨大で強い存在の魔王に、人間たちが無謀にも立ち向かう場面が何度も登場しますが、これは無謀な挑戦だろう、と思ってしまいます。実際無謀で、魔王を倒すために、多くの人間が傷つき倒れていきます。

しかし、この絶望的な状況でも、アドゥは理性的に戦術を練り、魔王討伐のための作戦を立てていきます。そして、その作戦遂行のために、協力させる人間の心理も理解し、必要であれば嘘をついて行動を誘導します。その徹底した合理主義が、人間とはかけ離れて恐ろしいと感じます。感情が伴わない笑いが不気味でしたね。

ただ、そのアドゥも、魔王を倒して弱さや感情を獲得し人間に近づくにつれて、最初はただの駒と捉えていた人間側の協力者を、対等な仲間として接するようになります。その数巻かけて描かれるアドゥの変化が一番の見所です。アドゥの不気味さが薄らいでいき、好感が持てるようになっていきます。

さて、残念ですが、この作品はすべての階梯の魔王を倒すところまで詳細に描かれません。第五位を倒すところまで描かれ、そこでいったん話が閉じられます。打ち切りのように感じられて少し残念です。ただ、最終巻までストーリー、絵のクオリティともに高いレベルにあり、満足できる傑作でした。なお、第一位~四位の魔王もアドゥ達に倒されることが、最終巻の最後の書下ろしページで分かります。そこにはさらに、すべての魔王を倒して人間になったアドゥ達に新たな試練が待っていることも描かれています。驚きとともに、なるほどと納得させられます。山下先生は、原作者としても突出した才能があると思います。もちろん肝心の漫画についても、魔王や悪魔たちのすさまじい描きこみをご覧になれば傑出した才能があることが分かるかと思います。大人向けのしっかりとしたファンタジー漫画を読みたい方にお勧めです。

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